ワクワクが止まらない!「よりいの街路樹づくりプロジェクト」とは?!インタビュー特集【埼玉県寄居町中心市街地】

「よりいの街路樹づくりプロジェクト」とは?

寄居駅南口に広がる市街地では現在、「寄居町中心市街地活性化事業」として街の整備が行われている。駅から商店街に向かって延びる中央通り線も拡幅され、令和5年3月の完成に向け新規に街路樹が植えられる予定だ。そんな中、全国でも前例のない街路樹プロジェクトが動き出していた。寄居町 街路樹プロジェクトとは一体どんなものなのか。

プロジェクトの中心メンバーであり、プロフェッショナルとしてアドバイザーも勤める(株)中央園芸 押田大助さんに話を聞いた。(押田さんのプロフィールは記事下段にあります。)

(画像:寄居駅南口駅前 2022年5月 中心市街地活性化計画により拡幅整備中の中央線道路)

寄居町の中心市街地活性化事業により寄居駅南口が整備され、中央通り線の拡幅工事が進行中です。その中央通り線に押田さんも含めた有志の方々が「よりい街路樹づくりプロジェクト」を計画されているということで、本日はお話をお伺いさせていただければと思います。

 

街路樹がなぜ必要なのか。

まず、街路樹がなぜ必要なのか、街路樹をつくることにどんな意味があるのかを教えていただけますか

押田:まずは、真夏に木陰をつくることでしょうか。夏は木陰がないと暑くて街を歩けません。

それと樹木は根からたくさんの水分を吸収して、葉から蒸散することで大気を冷やします。都市の問題になっているヒートアイランド現象を緩和する働きがあります。

また、街路樹は雨水を吸うので洪水防止にも役立っています。海外では雨水を植栽帯に誘導して吸収させる事例も多くありますね。

 

(画像:寄居町の町並み 2022年5月 )

近年はゲリラ豪雨などにより各地で水害が増えています。そういった災害も木が少ないことが要因のひとつとなっているのでしょうか

押田:そうですね、影響していると思います。

街中では土の面積がどんどん少なくなってますから。

一般の家庭も駐車場などでコンクリートをよく使いますが、雨水を自分の庭に溜まらないように道路に流せばいいと思われています。でも道路に流れた水がどこに行くかというと、どこに行くわけでもないんですよね。

一旦U字溝には流れ込みますが、そこが一杯になったら街中に溢れるしかないんです。

本来であれば敷地内に浸透させるべきなのですが……。

 

水脈をつなぐことで川が綺麗になる

(画像:寄居町金尾から荒川を望む)

寄居町は都市部に比べて自然が豊かだと思いますが、それでも十分とは言えないのでしょうか

押田:自然が多いとは言われますが、市街地には緑は少ないと思います。

昔は大きな木もたくさんあったのでしょうが、今はほとんど見当たりません。

(画像:GoogleEathで見た寄居町)

寄居は鐘撞堂山から荒川までが緩やかに傾斜していて、山に降った雨は市街地を抜けて荒川に辿り着きます。

この時、目に見える部分だけで水が流れているように見えるのですが、実はほとんどの水は地下の水脈を通って川に入ります。

樹木の根は、その水脈を繋ぐ役割をしてくれています。

でも今の市街地には樹木が少ないので、残念ながら水脈は途切れ途切れになっていると思います。

(画像:寄居駅南口駅前 2022年5月 中心市街地活性化計画により拡幅整備中の中央線道路)

(地図:「よりい街路樹づくりプロジェクトは、寄居駅南口から荒川方面に続く新たに拡幅される通りの街路樹を対象としている)

今回の街路樹プロジェクトはちょうど山から川へと続くちょうど真ん中あたりに予定地の道路があるので、話を聞いた時から寄居町の中心部の水脈を繋ぐ良い役割になると思っていました。

そして結果的に、川が綺麗になればいいなと。

 

川が綺麗になるのですか

押田:綺麗になります。

残念ながら今の荒川の水は汚れてきていると思います。昔はもっと綺麗だったはずです。

もっと街中に緑を増やすことで、必ず荒川にも良い影響がでてきます。

(画像:荒川 玉淀河原 2021年7月)

 

全国でも珍しい在来種の寄せ植え街路樹

計画している街路樹にはどんな種類の木を植えようと考えていらっしゃいますか

押田:最初の役場の計画ではハナミズキでしたが、ハナミズキでは木陰をつくったり水脈を繋ぐ役割は期待できません。根が浅く、大きくならない木ですから。

なので、在来樹種を考えています。

ー なぜ在来樹種なのでしょうか

押田:僕はこの仕事を始めてから20年近く街路樹に関わってきて、色んな街路樹の苦情や問題をみてきましたが、「結局、街路樹は何を植えたらいいのか?」ということをよく考えていました。

その結論として、地域の気候に合う在来樹種がいいのではないかと。

それも一本だけじゃなくて、寄せ植えにして。

(画像:寄植え街路樹のイメージ)

寄せ植えにするのはなぜでしょうか

押田:景観的な部分でいうと、色々な木が植えられていると見頃が分散します。

桜だけでは春に咲いて終わってしまいますが、他の樹種を寄せ植えしていれば春が終わっても次々に見頃を迎えるので、いつ街を歩いていても楽しめるようになると思います。

あとは、それぞれの樹木の根がお互いに絡み合うので台風の時も倒れにくくなりますね。

(画像:2021年GOODPARK内の寄植えポット)

ー 大きな木の方が倒れにくそうなイメージがありますが、そうではないのですね

押田:大きくなる木から中木・低木など色々な高さの木を植えるので、木の根も立体的になります。個人ではなくてチーム力を発揮する感じですね。

 

樹種は具体的にどんなものを予定していますか

押田:高木と呼ばれる大きな木では、コナラやアカシデ、シラカシなど、いわゆる「トトロ」に出てくるような。鐘撞堂山とかで普通に見られるような木です。

あとは寄居町の木のヤマザクラとか。

寄居の山や雑木林に生えているものをメインにして、地域性も出したいと思います。

(画像:寄居町風布川)

地域に元々存在している樹種を選ばれるのですね

押田:そうですね。

それに加えて街路樹として適しているかなどを考慮しています。

 

ひとつの街路樹の区画の中に小さな森をつくるようですね

押田:その通りです!一つの区画に森の生態系をつくるような、寄居の自然を凝縮したようなイメージでしょうか。

それを中央通り線に点在させて、森を点々と繋げていくと。

全部で12箇所ありますが、区画ごとにバリエーションも変えていくと全部で70種類以上の樹種になる想定です。

普通の街路樹だったら一種類で終わってしまうので、かなり多様性が生まれますよね。

(画像:個性豊かな木々を配した2020年のGOODPARKの寄植えポット)

こういった在来樹種の寄せ植えを使った街路樹は、他にあまりないのでしょうか

押田:ないと思います、僕の知る限り。

個人的に街路樹の空いているところにいろんな植物を植えてしまった事例はあるかもしれないですが、今回のように公共事業として新しく寄せ植えをする事例はないと思います。

 

地元の住民有志と企業による街路樹の持続的管理を実現

前例のない計画となれば面白くなりそうですし、大きなチャレンジでもあると思います。今回のプロジェクトでは街路樹の管理方法も通常と違うと聞いていますが、どのような管理方法を考えていらっしゃいますか

押田:普通なら街路樹は行政が管理の発注をして、地元の造園業者が管理をしていくと思いますが、寄居町の場合は街路樹管理に大きな予算は掛けられないようで、そうなると町の職員が清掃をしたり、最小限の頻度で業者さんやシルバーさんに依頼したりする形になっていたようです。

ただそれではしっかり管理できないのではないかという懸念がありました。

僕もこれまで全国の色々な事例を見てきたのですが、田園調布では街路樹や街並みに関わる「田園調布会」という管理組合のような組織があったんですね。

それをプロジェクトの発起人のメンバーにお話ししたら、「じゃあ寄居でもそういった仕組みを作ろうじゃないか」ということになり、有志を集めて「寄居の緑と空間を楽しむ会」というNPO法人を設立することになりました。

「緑の会」は僕や仲間の植木屋さん、そして市街地に住んでいる方々、あとは町外で関心のある方などがメンバーになって街路樹の管理をやる予定です。

(画像:若手経営者の会、寄居町視察風景)

ただ、町からは「20年後、30年後も見据えて継続できる仕組みを」と要望がありました。有志のボランティアだけでは世代交代などもあるので、長く続けるのは難しいのではないかと。

継続できるかという問題をどう解決しようかと考えていた時に「地元の企業に参加してもらうのはどうか」という話が持ち上がりました。

例えば寄居水天宮祭で打ち上げられる花火には、多くの企業が数十年規模で協賛し続けています。企業が入れば長く活動を継続することが可能ではないかということで。

企業はどのような立場で参加することになるのでしょうか

押田:街路樹サポート企業として、基本的には緑の会のみなさんと分担しながら軽作業をお願いする予定です。毎月1回、街路の清掃として落ち葉掃除や草刈り・除草作業などですね。

その際に枯れ枝の発生や病害虫の有無なども点検して、樹木や植物に異常が見られる場合は「緑の会」に報告してもらいます。

企業側からの反応はいかがですか

押田:知り合いの企業に話を聞きましたが、街路樹のサポート企業になることは、地域へ直接的に貢献できる機会として、とても良い反応でした。

街づくりや緑化事業に関わることは、企業のイメージアップにも繋がりますし。

計画の現在とこれから

計画は今どのくらい進んでいるのでしょうか

押田:令和4年の4月にNPO法人の立ち上げが正式に承認されましたので、現在最後の調整に入っています。それが終わり次第、沿線住民への説明やサポート企業の募集を始めようと思います。

いよいよ大詰めですね

押田:そうですね、ここまでいろいろとありましたが、「やっと」という思いです。

―  この街路樹が完成したら、寄居町の未来はどうなっていくと思われますか

押田:今回の区画ができたら、できればその先の荒川に繋がる大通りにも同じような街路樹を植えていきたいですよね。

そうすれば駅を降りてから荒川まで、ずっと寄せ植え方式の街路樹になるので、夏でも快適 な散策ができるようになると思います。
鐘撞堂からの水脈もようやく荒川まで繋がりますしね。

(画像:あらかわプレス動画「寄居を歩く」バナー)

最終的には、緑の少ない商店街や周辺の家の庭にも木々が増えてくれるといいですね。

そうなると自信をもって、寄居は自然豊かな街だと言えるようになると思います。

 

夢がますます広がります。今回の街路樹はあくまできっかけのひとつですね

押田:そうですね。

表参道や神宮外苑なんかもそうですが、街路樹が美しい街には人が集まってきますから、町も必ず活性化すると思います。

 

いつかは寄居の表参道ができるかもしれませんね

押田:もしかしたら表参道より良くなるかもしれませんね(笑)

 

寄居町街路樹プロジェクトの実現が待ち遠しいです。

本日はありがとうございました。 

押田:ありがとうございました。

 

*本記事は「あらかわプレス」による取材に「デザインのturiai」が同行しインタビュー記事として制作しました。今後もこの街路樹プロジェクトについて紹介してゆきたいと思います。

押田大助さんプロフィール

押田大助

1973年埼玉県寄居町生まれ。株式会社中央園芸 代表取締役。20代の頃はバックパッカーとして、北海道から九州、そしてタイ、インド、トルコなど、日本だけでなく、アジア各国を一人旅で巡る。大学卒業後、植木業の道へ進み、28歳で独立。造園工事、植栽管理業務を経て、「木々と共に暮らす生活」「大地の再生」「現代環境との共存」を掲げた現代の庭づくりを行う。2022年4月公開の映画「杜人(もりびと)」では寄居町を撮影地の一つとして制作協力も行う。

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