【寄居町市街地】築120年の古民家をリノベーションした「壺中居」(こちゅうきょ)を紹介します。【古民家リノベ体験談】

埼玉県寄居駅南口の市街地の路地を少し歩いたところに、
推定築120年の古民家を、2020年夏にリノベーションを完了した建築、
「壺中居」(こちゅうきょ)があります。

今回、埼玉県北部地区の造園業者さんによる会「28会」(にわかい)の
イベントの一環として「壺中居」の見学会が開かれましたのでご紹介します。
この記事はこのイベント内での解説としても使用いたします。

 

壺中居の来歴

推定築120年のこの建物は、
かつてこの地で行われた生糸生産のための蚕屋(かいこや)として
折原村(現在の寄居町折原)の当時の村長によって建てられ、
親族の方々に使用されてきました。

昭和6年(1931年)には、貸家の一軒として、
現在の寄居町市街地に移築されました。

その後、現在の大家さんもお住まいになった時期、
学習塾として機能していた時代を経て、
近年は骨董倉庫として骨董を楽しむ場所として使用されていたそうです。

今回、リノベーションを企画、実行した方にお話を伺いましたので
壺中居の写真とともにお話をご紹介します。

 

なぜリノベーションしたか。

今回リノベーションを行った方は路地裏にあるこの建物について、
その佇まいから10年来気にされていたそうです。

近年進行している市街地開発により古い建物が減ってゆく中で
この古民家を美しく残したい想いに駆られ、
2020年春から4ヶ月かけリノベーションを実行しました。

 

苦労した事

大家さんの紹介の大工さんの手でリノベーション。
図面構想と改築の手伝いや、掃除も自ら行いました。

もっとも苦労した点といえば、傾きの修復です。
家全体が傾いていただめ、床の水平を出すために基礎工事をやり直しました。
床は水平することにより間が空いてしまった部分に新たに木材を入れてゆく作業も行いました。

また、昔の建物を使えるようにするためには、
温度の快適性を確保することが課題となります。
床暖房、エアコンを導入し温度調整を行えるようにしました。
冬場にリノベーション内容を立案したからこそ、
床暖房の必要性に気づかれたそうです。

さらに1階の天井は2階の床も兼ねている「根太天井」でした。
これですと外気温の影響を受けやすいため
2階の床には断熱材をしき、その上に床を貼り直しました。

 

良かったこと。

一方で苦労してリノベーションした分、満足している事もあります。
当初は予想もしていなかったような嬉しい事もいくつか有りました。

 

懐かしさと静けさ。

建屋12坪の壺中居は、4部屋に分かれており、
ちょうど漢字の「田」という字のようです。
古くから農家の家として典型的な「田の字の家」。

実際に使ってみると、無駄がなく、空間活用の合理性を感じることができたそうです。
日本に根づいてきたミニマリズムにも触れることができました。

また囲炉裏あった事に懐かしさを感じ、
この建物をリノベーションしようと決心しました。
こうした昔ながらの日本の建物やスタイルには
DNAレベルで懐かしさを感じるようで、
壺中居でとても良い時間を過ごせているそうです。

少し意外だったのが「静けさ」です。
車が入ってこない路地、市街地だからこそ得られる
「静かな環境」があったことには驚かされました。

寄居町には路地も豊富です。市街地の古民家や住宅、店舗を活用頂き、
静かで豊かな生活を楽しんで頂く方が増えれば嬉しいです。

 

庭について。

大きすぎず建物とバランスを取れた庭はとても気に入っています。
寄居町の園芸業者さんのご協力によるものですが
黒塀や苔、灯籠を配置し、もともとあった木をできるだけ活かして作り上げてくれた庭です。

すでにあった大家さんの庭造りのセンスに脱帽しつつも、
新たに再構築してくれた庭師の皆様の腕には本当に感心します。
お陰様で素晴らしい庭となりました。

また土壌改良の効果か苔や植物の元気もよく
秋には曼珠沙華がきれいに咲いてくれました。

 

二階の梁

もともとは2階は蚕(かいこ)の飼育場です。

しかしひと目見て松の木の梁が自然に湾曲し、
黒いつやをたたえている美しい姿に惹きつけられました。
棟梁の話によると、この形状によって長年屋根の重みなど
上からの力を各方向に分散しているそうです。

改めて見ると一本一本の柱が細いこの家屋が
長年、立派に持ちこたえてきてくれて良かったと
この梁を見ると感慨が湧いてきます。

 

大家・棟梁との合作

リノベーションの楽しみとして、ディテールにもこだわりました。

この建物の照明や家具は大家さんから借り受け、
そのまま使わせてもらったり再配置たものが多くあります。

戸のガラスは大家さんが集めたものがはめ込まれ。
玄関を入ってすぐのところにある東京オリンピックの復刻版ポスターや、
当時の張り紙も貴重なものばかりですので改めて楽しめるように使用しています。

そして、大家さんから紹介頂いた大工さんとの出会いについては、
このリノベーションを素晴らしいものにしてくれた大事な要因といえます。
同世代の棟梁はイメージをうまく汲み取ってくれ、
お互い楽しい時間を共有しながらリノベーションに取り組めたと思っております。

言うなればこの建物は大家さんと、
大工さんとの合作と言うことができます。
一人のイメージだけではこのように上手くは仕上がらなかったと思います。

 

寄居町の皆様の協力

壺中居は町内の若い皆様の才能と熱意にも大いに支えられました。

前述の町内の庭師、中央園芸さん、金子園芸さん
「豊田彫刻工房」「アトリアRIKA」さん、「きぬのいえ」「アートコア」さん等
高い技術と感覚を持った職人さんたちが協力してくれ
「壺中居」が素晴らしいものして頂けたと思います。

▲「きぬのいえ」のオーロラ染め生地と「アトリエRIKA」さん縫製による座布団。

 

「壺中居」の名前の由来とリノベーション

壺中居の意味ですが安岡正篤先生の六中観の一つ「壺中有天」からその文字を頂いております。
「壺中」とは別天地という意味で、寄居の「居」をつけて。壺中居としました。
人生の過程において、時には別天地で楽しむ時間も必要であるという意味を含んでいます。

古いものにはそのものが経てきた時間が内包されています。
一見趣味の要素が強いリノベーションですが
再び生かされているその姿を見れば私達もその経過した時間にも思いを馳せ、
感謝しながら楽しむ事ができるのでは無いでしょうか。

 

壺中居は現在、動画や販促物制作会社「2020HH」のオフィスして、
また一般社団法人倫理研究所、寄居・秩父倫理法人会の事務局としても活躍しております。
リノベーションをするからには毎日使って行けるものにするのが良いと思いました。
使ってゆくからこそ、美しさも磨かれ、古いものの価値も見いだされると思います。

ありがとうございました。

【寄居町市街地】推定築120年の古民家をリノベーションした「壺中居」(こちゅうきょ)を紹介しました。

記事に関連したリンクは以下です。

神社仏閣彫刻 「豊田彫刻工房」 ホームページ
アトリエRIKA ホームページ
きぬのいえ ホームページ
アートコア ホームページ
2020HH ホームページ
一般社団法人 倫理研究所 ホームページ

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